湖やリザーバー、ポンドなどで使うフライリール、どんなリールをお使いですか?
WFFCに参戦以降、ポロシリがスティルウオーターの釣りで使っているフライリールといえばこれ、カセットリール一択になりました。
カセットリール? そんなリール話題にもなっていないって? カッコ悪い? さもあらん!
ここでは、世界で同リール群がスティルウオーター用フライラインを収納するフライリールの最適解と目されている理由や、
これまでポロシリが使ってきた機種についてご紹介します。(2024年12月)
必然としてマストになるリール
カセットリールと聞いて、佳日のSTH社のそれ(アルゼンチン製や米国製があった)を思い出した人はキャリアの長いアングラーです。「Orvisブランドでも販売されてたよなぁー」なんていうのはひと昔前の話。
2020年代の今、スティルウオーターの釣りにカセットリールを使う最大の理由は、スペアスプールに該当するカセット(ポリカーボネート製)が安いから。ポロシリが愛用している機種のカセットの実勢価格は2024年現在いずれも1個2,000円くらい。スペアとして10個買っても20,000円、20個買っても40,000円くらいですむ。
というのも、一般的なフライリールのアルミ製スペアスプールは相応の価格だ。廉価なものでも8,000円くらい、米国の有名メーカーのものなると多くは1個あたり2万円を越えている。本体側の耐用年数も含めて考えると、高価なスプールを10個も20個も買うのは現実的な選択とは言いがたい。
しかし、アイスオフのシーズン初期からバックエンドの12月まで、湖やリザーバーのマスなどをその日の自然に合わせて効果的に釣るためには、じつにさまざまな種類、番手のフライラインが必要になる。そして、ラインの数だけスプールがいる。費用がかさむ。そんな時ありがたいのが、1個あたりのカセットが安価なカセットリールというわけ。
副産物的な利点もある。一般的なスペアスプールと違ってカセットにはハンドルがついていない。凸部がないからカセットどうしを重ねて小さくパッキングしやすい。重さも最小限になる。必要なラインの分だけ何個もフライリールを持ち歩くのは賢明じゃない。かさばるうえに重い。
もう1点。透明なカセットを採用している機種の場合、ラインからバッキングまでカセットの中身がよく見えてわかりやすい。新品時に付属してくるラインタイプのデカールをカセットの内側にラベルすることもできる。
このあたりが、これらのリール群が最適解と目される最大の理由だろう。
フライリールなのにプラスチックなんてカッコ悪いって? さもあらん。でも、私自身はあれこれ10周くらいして、これらのリールに魅力を感じている。そこには「足るを知る」空気が漂っていて、現代的なミニマリスト的洗練を感じるからだ。
日本で人気がない理由
ともあれ、スティルウオーターのフライフィッシングが盛んな欧州、オセアニア、カナダでは愛用者が多い。コンペティターを筆頭に湖やリザーバーに足繁く通うアングラーはこのリール群を使っている。そう、春夏秋冬1年をとおして湖のマスを釣りたいアングラーならーー湖の自然と湖のマスを知れば知るほどにーー必然としてマストになるのがカセットリールなのだ。
条件がバンクであれボートフィッシングであれ、試合規模がワールドであれユーロであれ、湖の釣りのセッションで常時トップ50に入るような優れた選手の中に、同リール群を使っていない選手は一人もいないだろう。
日本ではメーカー、著名人、小売店はもとより、コンシューマーの大半が米国のF.F.をおもな情報源にしている。取引先もそうだ。そして、それ以外の国のマス釣りの実際をよく知らない(事実、スティルウオーターの釣りをテーマにしたカセットリールについての日本語の記事は現時点で1件もインターネット上に見当たらない)。
しかし、湖そのものへの知見や、湖やリザーバーのマス釣りの実際について、洋の東西を広く見聞してみたらどうだ? 気になる方がいらっしゃいましたら、ポロシリのクリニックにぜひお越しください。
もし購入するなら同時に本体を2台購入したほうがよい。どんなに多くのライン(カセット)を持っていても本体が故障したら役にたたないから。2台以上あれば、複数の仕掛けおよびタックルを同時にセットアップすることもできる。ボートフィッシングの際ならなおさらだ。
以下に、ポロシリが使っているカセットリール3機種を紹介します。2機種はすでに廃盤ですが、参考になれば幸いです。
米国オービス社のクリアウォーターLA Ⅳ。カセットのキャパシティは、WFのフローティングラインと適切なバッキングライン量を基準に考えると、7番のラインまで(メーカーでは6〜8番用としている)。ドラグはひじょうに優秀。負荷の全域でとても滑らかに機能するし、カセットの着脱も速やかにできるようデザインされている。
過去4年間で本体5台、カセット計30個くらいを使っての結果だが難点が2つあった。
一つめは、内部のワンウェイベアリングの”ころ”に錆が発生した。これは手元にある新旧5台すべてに同じ症状が出た。1年に2回、ベアリングを取り出し、クリーナーで錆をできるだけ落とし注脂しながら使っている。
二つめは、樹脂製のカセットとスプールとの組み合わせによって、”はめあい”に難が生じた。2023年に最後に購入した新品のカセットのうち4個くらいに、カチッと止まらずスプールから脱落してしまうトラブルがあった。
このリール、初期は韓国製だったが途中から中国製に変わっている。ひょっとすると、製造元が違う本体とカセットの組み合わせの際に完全にフィットしない現象がおきるのかもしれない。実際、リール1セット(本体1個、カセット3個)の中で装着に不具合が生じたことは一度もない。
”はめあい”の問題については「スプール側のOリングの線径を太いものに替えればよい云々〜」とした対策の記事(英文)を見たことがある。
難点が生じた原因は、ユーザーである私の使用頻度や使い方の影響かもしれない。しかしながら、使用時に互換性が求められる現行商品の販売中に、生産国やプラントを変えるあたりは褒められた話じゃないと思う。
基本的には、使いやすいリールです。(2024年12月に廃盤の情報あり)
現在の事実上のハーディーというべき、イングランドはAlnwickに拠点をおくグレイズ社によるカセットリール。
本体4台、カセットを計20個くらいを使用したが、これまでトラブルは一度もなし。ドラグもマス釣りには必要十分で逆転時も滑らか、カセットの着脱も速くてスムース。正転時のクリック音も好き(逆転時は小さめ)。巻き取り時のクリック機構に使われているスプリング&ボールのボールは金属を採用するなど、摩耗への耐久性にも安心感がある。
WFのフローティングラインと適切なバッキングラインの量を基準にすると、写真の5−6−7モデルで〜6番ラインまでの番手に適している。おもに6番タックルを使うアングラーなら最適の1台だ。
カセットにデザインされた、収納したラインがすぐにわかる”Line Identification System”はとても便利。ラインサイズや比重が示された、カセットの穴に付属のピンを差し込んでおけば、「このライン何だったっけ?」のようなトラブルがなくなる。ちなみにこのシステム、同時期のハーディーブランドの高級カセットリールUltralite CLS Reelにも採用されているもの。複数のラインを使うアングラーのストレスをよく理解していると思う。
スティルウオーターの釣りをよく知るメーカーによる、お手本的な1台(残念ながら現在は廃盤)。
情報。ポロシリに同製品の在庫(本体計2台とカセット計11個ほか)あります。バラ売りはしておりません。ご希望の方はメールでお問い合わせください。内容は以下のとおりです。
●新品1セット(本体1台、カセット3個、ユーザーマニュアル、ピン、専用ケース、元箱の一式)
●中古1セット(内容は新品と同様)
●中古スペアカセット5個(ピン付き)
ウェールズはエアフロ社のスイッチブラック・リール。日本ではフライライン・メーカーの印象がつよい同社だが、現在の実際はフライロッドやリール、アクセサリーまでの製造・販売を行なっているF.F.総合メーカー。
これを書くにあたって手元にある2台を改めて確認したところ、ドラグは、セットした負荷が軽い場合はとても滑らかに逆転するが、大きな負荷をかけた状態では及第点。回転に偏りがある。が、マス相手に使う範囲では必要十分な滑らかさだと思う(これまで計5台に触れたが、過去に一度逆転時の回転に顕著な偏りがあり返品交換したことがある。参考までに)。
ドラグ部分(写真上参照)は”おおむね”密閉されていて、水分や塵がベアリングやドラグワッシャーなどに侵入しづらいよう設計されている。
ほかの2機種に比べ、カセットの脱着には力と慣れを要する。スプールから速やかに抜くには親指2本を上手に使うのがコツ。
7/9モデルは、文字どおり7番から9番のラインに適合するキャパシティ(カセットの外径は先に紹介したクリアウォーターとほぼ同じだが、より多くのバッキングを収納可能なミッドアーバー的デザインになっている)。
カセット1個が9.99英ポンドと安価で現実的。ポロシリでは現在2セット、つまり本体2台にカセット10個を使っている。
スティルウオーターの釣りでの汎用性が高い1台。同社のロングセラー商品の一つ。
(2024年12月)
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