このページでは、ガイドフィッシングの準備について、私の例を紹介しています(一部には一般論を記した部分もあります)。
ガイドフィッシングが初めての方やビギナーの方は、参考までにぜひご覧ください。
なお、年齢や体力、嗜好などがある個人の立場から書いた例ですので、万人向けのマニュアルではありません。ご承知ください。
ガイドフィッシングの目的、私の場合
多くの人は、釣りの準備といえばフライタイイングのことが頭に浮かぶのかもしれません。しかしながら、”ガイドフィッシングの準備””私の例”という切り口になぞらえると優先順位は低めです。よって、フライの準備については後ほどご紹介します。
現在の私の”ガイドフィッシングの目的”を概念のようなかたちで煎じ詰めると、「現場の釣りにおいて、自分より秀でたガイドを伴うことで、より多くの驚きや発見をすること」のようです。このねらいに対する欲求は、特定の釣り方で魚を釣ること、釣れた数や魚の大きさ、いろんな釣り場に行くことなどよりも格段に大きい。
食事にたとえるなら、「プロがサービスする旬の味を”おまかせ”で楽しみたい」ともいえます。旬はガイド当日のこと、味は(その日の)釣りの内容です。また、フィジカルな面からみても、40代後半の現在、”自分の思う釣り”は自分でやればいいと思っています。以下は、そんな個人の状態や嗜好にもとづいて書かれたものです。マニュアルでもなく一般論でもなく、私の例です。
一連の基本動作を確認しておく
必要な手配などが済んだ後、私の場合、当日までに最優先でやることがあります。キャスティングやメンディングなど一連の基本動作の確認およびおさらいです。
これを行なっておく理由は、ガイドフィッシング時にーーどんな状況でも、どんな距離でも、どんな大きなフライでも、どんな仕掛けでも、あるいは、どんな番手を用いた道具のどんな釣りでもーーガイドの指示にしたがって的確に行なうためです。そして、それさえできれば、どんな時であれ魚と遊ぶチャンスが増え、私の目的である”驚きと発見”をする機会を増やすことができるからです。
もちろん、「渓流で×××をターゲットに×××の釣りをやってみたい」など、私からガイドに対して基本的なリクエストをしたうえでの話。以下が、私が一連の基本動作の確認などを重要視している理由です。
時間を有効に使うために
釣りは自然相手の遊びです。当日の状況は誰にも想定できないし、変えることもできません。「晴天続きで水温が高く水量が減った」「川が増水して急に濁りが入った」「強風になった」「雪が降って急に気温が下がった」など、枚挙にいとまがありません。むしろ、思うような条件で、事前に思い描いた釣りをできることのほうが少ないくらいです。これは一般論でしょう。
ならば、その日あるいはその時においてもっとも楽しめそうな釣りーー場所、タックルやフライ、釣り方、対象魚などーーは、原則として現地の釣りぜんたいに詳しいガイドに任せたほうがいいと私は思っています。状況に逆らわず摂理(自然)にならうことが、限られた時間の中でパフォーマンスを上げるいちばんの方法だと信じているからです。
たとえば、今自分たちがいる本流は濁りが入って釣りができなくなったが最寄りの小さな支流に移動すればニンフの釣りは楽しめるとか、川の釣りはすべてダメでも最寄りの湖に行けばストリーマーの釣りが楽しめる、などのような状況です。
渓流、ドライフライ、ライズフィッシング、大型ニジマス、などのように、私からのリクエストの項目が多ければ多いほどガイドには選択肢がなくなります。都合、移動時間ばかり増えることが多くなり、釣りをする時間が減ります。一方で、私が複数の事項にこだわらなければ、どんな状況であれガイドフィッシング時の時間を最大限有効に使うことができます。私はーー貧乏性ゆえかーー釣りをしていない時間がいやなのです。
道具がなければガイドなど誰かに借りるか、必要なら買えばいい。どんな番手のタックルを使うどんな釣りであれ、ゲストである私に基本的な体力とスキルさえあれば楽しむことができます。予想外の釣りに出会うことは、ある面で私の目的にかなっています。そして、それらは悪天候時に訪れることも少なくありません。
以上のような理由から、私の場合、より広義でユニバーサルである上記の準備(一連の基本動作の習熟)をもっとも重要視しているというわけです。
現場用のタックルを使った具体策
ガイドフィッシングに向けた基本動作の確認時は、(シングルハンド・ロッドであれば)いつものキャスティング練習に使っている6〜7番のラインと9フィートまでのロッド、ヤーンフライなどは使いません。現場で使うであろうラインとロッド群、ラインに適合するフライ各サイズ(事故防止のためフックポイントは事前に折っておきます)、フライに適合したリーダーとティペットを使います。
練習の一つは”まと”を用いたものです。30インチ程度の円形のターゲットを用意し(見合った大きさのプラスチック製のバケツのフタなどを逆さまにし、内側に水を入れて地面に置くと、フライがターゲットに入ったかどうかわかりやすい)、実際の釣りに応じた距離にそれを配置して行ないます。
詳しい方法についてここでは割愛しますが、上記のチェックは最小限の情報がある だけでいつでも始めることができます(たとえば「8番ラインと9フィート のロッド」と言われたなら、近距離から最大24m程度まではキャストする可能性があること、フックサイズにして最大#1/0程度までのフライを使う可能性
があることがわかります)。どの番手でも同じ要領です。
バランスがとれたタックルを用意することは、いうまでもありません。
基本的なことを実践できない釣り人が多い?
伝説的存在のとある北米のフィッシングガイドは、自著の冒頭でこう書いています(以下一部抜粋)。
「××××を簡単に釣り上げるマジックを追い求める人が多いが、1尾の××××に1つのフ
ライをプ レゼンテーションする一連の動作すべてがとても重要であ ることを心してほし
い。これが自然とできるようになれば釣果はついてくる。(中略)この小冊子をビギナー向けだと感じる人が多いようだが、ここで書かれている基本的なことを実践できる釣り人は少ないーー」。
さらに一部を抜粋して著者の言を言い換えると、以下のようになります。
「基本的なことを実践できない釣り人が多い」
ガイドフィッシングに”マジック”を求めているゲストとしては、なんとも耳が痛い話ですね。
目的のために”自分”を準備する
これは一般論ですが、フライフィッシングは少なからず身体を使う娯楽です。文字にするといささかドグマ的ですが、自分の身体を準備・調整しておくことはもちろん、一連の基本動作を学んだりおさらいしておくことは、とても大切です。
もっとも、基本動作のスキルを上げておくことは私にとって手段であって(ガイドフィッシング上においては)目的ではありません。しかし、道理として私の目的達成の度合いに直接かかわっています。したがって、手段である一連の基本動作がじゅうぶんであるよう準備しておくよりほかない、といった具合で す。
たとえば、料理を楽しむために評判の料理人がいるレストランを予約したのに、体調が悪かったり、お腹がいっぱいでは、五感を使って余すところなく料理を味わうことができません。
実際、食いしん坊の私の友人たちは、そのあたりに”ぬかり”がない。まるで試合前のアスリートのように、何かを食べるその時に向けて”自分”を準備するのです。私は、ほかでもないそんなグルマンの友人たちに、”楽しむための準備”について学びました。
準備の内容は人それぞれ、目的しだい
ここまで読んだ人の中にはこんな印象をもった方も少なくないと思います。
「時間もないし練習はしたくない」
「自分の好きな×××の釣りをやりたいだけ」
もっともな話です。
フライフィッシングは娯楽です。だから、ガイドフィッシングだって楽しみ方は人それぞれです。それでいいと思うし、上記の内容に対して違和感を感じる人や 反対意見があるなどいろんな感想があって当然だと思います。なぜなら、冒頭にも書いたように、これは一般論でもマニュアルでもありません。私が自分の目的達成のためにやっている”私の準備”です。その点については、なにとぞご了承ください。
ガイドフィッシングの準備(一般論)
一般論だと思うのは、ガイドフィッシングの目的しだいでは、上記の手段にあたる部分=優先すべき準備の内容も大きく変わるということ、そして、それに伴って結果も変わるということです。
たとえば、フライフィッシングを体験することが最大の目的だとか、釣果(自分の担保に直結していること)を最優先の目的としていない人であれば、身体の状態や、一連の基本動作などはあまり重要ではないのかもしれません。
「目的をはっきりさせておくこと」。ひょっとすると、これはガイドフィッシングを楽しむうえでもいちばん重要なのかもしれません。そこが明確になればーー自分が時間をかけて準備すべき内容や優先順位ーー手段が明瞭に見えてくるからです。
また、自分の目的が整理されていれば、もとよりそれがガイドフィッシングをすることでかなう可能性があることなのか、事前に検討することもできます。
驚きや発見に出会うための私の具体策
先に書いた私にとってガイドフィッシングの目的は、「現場の釣りにおいて、自分より秀でたガイドを伴うことで、より多くの驚きや発見をすること」でした。そして、食事にたとえるなら、「プロがサービスする旬の味を”おまかせ”で楽しみたい」でした。これらの概念を「フライの準備」をテーマに具体的に落とし込むと、私の場合以下のようになります。
「多くのフライパターンに出会い、それらを効果的に使う方法をガイドに教わって魚を釣りたい」
先の章の冒頭にも書いたように、”自分の思う釣り”は(ホームで)自分でやればいいと私は考えています。せっかくガイドがそばにいるのに自分の経験則(フライや釣り方など)を用いてトライするなんてもったいない。そう思っているのです。
大枚をはたいてガイドを雇うのですから、できる限り多くの驚きと発見を楽しみたい。知らなかった何かを少しでも知ること。未知の何かを経験すること。私にとっては、これがローカルのそれに秀でた他者を伴うガイドフィッシングならではのいちばんの醍醐味です。私の個性だと思いますが、好奇心が旺盛で欲張りなんですね。
フライはすべて現地で買う
以上のような理由から、北米でガイドフィッシングを初めて経験した20代半ばの釣行を除けば、以降に経験したガイドフィッシングにおいて事前にフライを用意したことはたったの一度もありません(けっしてタイイングが嫌いなわけではありません)。ガイドと一緒の時は、彼らがすすめるフライを買うことにしています。
現地の小売店などにはたいてい”旬のフライ”が売ってあります。具体的には、ガイドを予約する時に「フライは持っていませんが、現地で買えますか?」と確認しておくだけです。
フライを現地で買う理由
私がフライを現地でガイドに選んでもらって買う理由をさらに補足します。
まず、一度でもお願いしたことのあるガイドがいれば、自分のスキルに合わせて最良のフライを選んでくれます。客観的傍観者であり、現地での経験則を積んでいる優れたガイドは、どんな時であれ(このゲストなら)たった今どんなフライで何をどうすればその魚が釣れるのか、もっとも効果的な手段を知っているものです。
特に大型のフライや総重量が重い仕掛けの場合、ゲストのスキルに応じてフライを1サイズ下げる、あるいはフライパターンそのものを変えるなど、臨機応変にガイドが調整をしてくれます。不慣れな人にとってこのような事態は予期できません。万全になど準備のしようがないのです。
また、私のようにフライ(とその釣り方)選びを一任するということは、言い換えれば「釣果は自分がすべてを担保しませんよ」という意思の表れともいえなくありません。ガイドにしてみたら辛いところですね。
一方で、ガイドフィッシング時に自分のフライを用いて自分の方法で釣るというのは、都合「釣果については自分がその多くを担保します」と言っているのに等しい。私は前者ですが、いずれの場合も目的しだいでしょう。
私の場合、フライの選択には時間を使いません。釣りの際は、ガイドに指示されたように波をたてないように静かにゆっくり近づくとか、魚釣りそのものに集中します。そして、なぜその時そのフライを選んだのかとか、なぜそのサイズや色に変えたのかなどは、移動の時間などゆとりのある時にガイドに聞いておきます。これらは、自分の新しいイディオムになります。
もちろん、複数回同じ場所へ同じ季節に訪れていると、事前に準備できるフライパターンが出てくる場合もあるかもしれません。しかし、冷夏だとか渇水だとか、まったく同じ状況にならないことのほうが多いのが、自然相手の遊びであるフライフィッシングの”面辛い”ところです。
購入したフライはタイイングの基本形に
このように、私の場合ガイドフィッシングの準備としてはタイイングをしませんから、それでなくても多忙な準備期間中の時間を節約できます。デメリットといえば、フライの購入費用がかかるだけです。そのぶん、先に紹介した一連の基本動作の確認などに時間を費やすことができますから、都合はさほど悪くありません。
買ったフライが余った時は友人へのお土産の一部にすることもあります。また、現場でガイドから使い方を教わって目ざましい活躍をしたようなフライは、未使用のものを数本だけ保管用に確保し、自分がタイイングする際の基本形にするために活用しています。
私にとって現地でフライを買うこと、これらを持ち帰ることは、ガイドフィッシングのじつに大きな楽しみです。これがないと寂しい、あるいはつまらないというのが私の本音なのです。
フライを買うのは本当に高いのか?
フライ1本の値段は知れています。マス釣り用のものなら、安価なもので日本円で1本500円くらい、手の込んだ大型ストリーマーでも平均すれば1本1,000円程度です。
コストがかかるといっても、一度壊れてしまったら価値がなくなるようなロッドやリールなどに比べじつに安価なものです。なにしろ、フライパターンとその使い方のようなエッセンスは、壊れたり目減りしないばかりか、以降いろんな場面で自分の釣りに役だってくれるのです。
冒頭に書いたように、私のガイドフィッシングの目的は驚きと発見に出会うことです。未知の釣りへの知識欲、体験したいという欲を満たすためでもあります。
しかしながら、自分一人で発見できることや、釣りに使うことができる時間には限りがあります。ガイドにフライのことを任せることでそれらを得る可能性が少しでも広がるのなら、多少費用がかさんでも私にとっては喜ぶべき選択なのです。お金があっても買うことができないのは人生の残り時間じゃないか? そう思ってるからです。
また、 これまでガイドが現場で教えてくれた手本(フライパ ターンとその効果的な使い方、およびそれを用いる理由)は、現在の自分のフィールドに帰化して生きたイディ
オムになっています。私にとって、これもガイドフィッシングを経験したことによる大きな資産の一つです。
ここまで書いたことはすべて私の例です。年齢や体力、趣味や嗜好などがある個人の立場から書いた例ですから、万人向けのマニュアルでもなければ、一般論でもありません。しかしながら、読んだ方が少しでも参考になる箇所があれば幸いです。
フライパターンよりプレゼンテーション(一般論)
フライは、プレゼンテーションなど一連の基本動作が適切であってこそ機能を発揮します。そして、多くの場合において、魚を釣るための最大の要点はプレゼンテーションの可否にあります。
そもそも、適切な場所に正確に落とすことができなければ、どんなフライも役にたちません。そして、たとえ当代きってのフライタイヤーがデザインした評判のフライでも、落とす場所やプレゼンテーションしだいでは、魚をスプークさせるにじゅうぶんな脅威になります。
一方で、フライをマスに届けるための基本動作のスキルには個人差があります。それは、たとえ(サイズとパターンが)同じフライでも、万人がそれを的確にプレゼンテーションできるとは限らないことを示唆しています。
スキルによって有効なパターンは変わる(一般論)
たとえば、ひと口に標準的なバランスで巻かれたアダムス#14といっても、適宜ラインスピードを落としたキャスティングができない人にとってはトラブルの原因になりかねません。フライサイズに合った太さのティペットを使うことが身に付いていない人も同様です。
シャンクに対して縦に巻かれたハックルは、パラシュートタイプのそれに比べて空気抵抗が大きく回転しやすいものです。そして、速いラインスピードはそれを縮れさせる原因になります。ティペットやリーダーが縮れてしまうと本来の機能を発揮しないので、魚が釣れづらくなってしまうのは道理です。
たとえ雑誌に出ていたから、たとえ憧れの著名人がすすめていたからといって、たった今の自分(のスキル)にそのパターン(あるいはそのサイズ)が適切(に投げられる)かといえば、必ずしもそうではありません。これはリーダーの長さや、現場で使うラインやロッドなどにしても同じです。
また、Aというポピュラーなフライパターンと聞いて自分でタイイングしても、何かが少し異なるだけで効果が半減してしまう、あるいはまったく釣れないというケースも少なからずあります。パターンブックや雑誌、インターネットなどで見たものと当地で使われている効果的なフライのディテールが違うことは、事実よくあることです。
これらは、すべて一般論だと思います。
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