十勝のマス釣りに使うフライパターンは、エゾハルゼミなど一部の虫をのぞいては本州以南で使うものとほとんど同じ。そして、先達たちの本に学べるものばかり。特定のエサに執着しているスレっからしのマスを釣る時など特殊な状況を除けば、ポロシリがガイド時に使っているのも、誰もが知っているユニバーサルで使い回しがきくフライが大半を占めています。まずはこれまでに出版された古今東西の名著に大著、国内外のフライパターン・ブックなどをご覧になってみてはいかが。先人の思想やデザインの意図はそのままに、カラーを十勝や北海道のそれに合わせたりマテリアルを最新のものに置き換えてもいいし、ページをめくって思わず開眼したイマジネーションを原動力に自分だけの1本を自由にタイイングするのも愉快です。また、旅のお供にタイイングキットをしのばせておくのも一興。楽しみが倍増することうけあいです。下に紹介したのは、いずれも甲乙つけがたいポロシリおすすめの著作です。
もちろん、ガイドご予約当日までにフライを準備したいけど、どんなパターンがよいのか見当がつかないという方はお気軽にガイドまでご相談ください。詳しくご案内いたします。また、ゲストの方には弊社ガイド謹製のシーズナルなフライの販売もございます(350円〜)。あわせてご利用ください。紹介した書籍の購入先リンク一覧はこちら>
水生昆虫アルバム
島崎憲司郎著
日本を代表するフライタイヤー、島崎憲司郎さんの大著。水生昆虫に特化した著作で、メイフライ、カディス、ストーンフライ、ガガンボなどなど、代表的でいろいろと参考になる種をカバーした本。著者によるイラストレーションが素晴らしく、流下やライズのイメージをつかむのにぴったり。ライズするマスをねらう際に使うフライパターンの要諦とエッセンスがまとめられていて、困った時に辞書のように開いてよし、読みものとして通読してもよし。読むたびに渡瀬川の流れや桐生市の古い町並みを思いだします。フライの雑誌社刊。
American Nymph Fly Tying Manual
Randoll Kaufmann著
オレゴンの雄、ランドール・カーフマンによるニンフだけのパターンブック。ポロシリのフライボックスに常備している、カリフォルニアのタイヤー、ダグ・プリンスによるブラウンフォークド・テイル(プリンスニンフ)やビッチクリーク、ラバーレッグス、カジュアルドレスなど、十勝で使う実弾ニンフ群はこれ1冊で完結してしまうほど。昔、アイダホでご本人にお会いしましたが、オニヤンマのようなセルフレームの眼鏡をかけた飄々としたおじさまでした(ちゃっかりサインはもらいましたが)。1975年刊。
Trout Flies
Gary LaFontaine著
モンタナの天才フライタイヤー、2002年に他界した故・ゲーリー・ラフォンテーンによる一冊。この少し滑稽なフライ群の効くことといったら! モホークMohawkは軽く水面に高く浮くからカメムシのイミテーションにぴったり、コーンConeは中型以上のメイフライ、たとえばモンカゲロウのフローティングイマージャーによし、スパークルピューパ・シリーズSparkle Pupaはカディスイマージャーに、フレームスローワーFlame Throwerは、ポロシリでは晴れた夕方のメイフライがらみのイブニングライズに愛用中です。1993年刊。
Happy Tyers
備前貢著
今をときめくニッポンのフライタイヤー、備前貢さんの著作。北海道で釣りをする際に”どんぴしゃり”のフライパターン群が目白押しの1冊。繊細な実弾ドライフライ群から大型ストリーマー、果てはフルドレスのサーモンフライまで、著者が記しているようにまさに”温故知新”な内容がぎっしり。島崎憲司郎さんのマシュマロピューパをたたき台にして生まれたマシュマロボディのアイディアは、ハルゼミや大型の陸生昆虫などボリュームのあるボディを軽く仕上げるメソッドとして秀逸そのもの。ポロシリでも夏場よく登場するフライパターンの一つです。つり人社刊。
マスター・フライ・タイイング・ガイド
アート・フリック編
アート・フリック、レフティー・クレー、カール・リチャーズ、アーネスト・シュバイバート、ダグ・スイッシャー……。連ねた著者の名前を眺めるだけでも生唾ものの一冊。御大デイブ・フィットロックによるフィットロック・スカルピンは、十勝の川で春に使うカジカのイミテーションによし、デイヴズホッパーは晩夏のバッタに、アート・フリックによるヘンドリクソンなどスタンダードパターンは晩春からのドライフライ・フィッシングの常備品に……などなど、永久不滅のパターン群が目白押し。1974年、ティムコ刊。
Western Trout Fly Tying Manual
Jack Dennis著
もはや解説不要ともいえるジャック・デニスによる金字塔的な一冊。ハンピーやウルフ、スパイダーなどなど、サーチングパターンとしても日々使えるユニバーサルな大定番ドライフライの多くを掲載、十勝でドライフライ・フィッシングを楽しむならこの1冊で晩春から晩夏までかなりの範囲をカバーできる。また、現在もモンタナの一部のガイドがベイティス(コカゲロウに似た種)にライズするスレたマスの攻略に使う最後の切り札、レネゲイドRenegadeなどのシークエンスも。バジャースパイダーは風の強い日に◎です。1974年刊。
Lee Wulff on Flies
Lee Wulff著
言わずと知れた一連のウルフパターンの生みの親であり、伝説的フライアングラーであるリー・ウルフの著作。ウルフ・フライズの章はもちろん、スパイダーとスケーターのフライパターン群について一章をさいているあたりがたまらい。ハチを真似て黒と黄色のウールヤーンでボディを巻いたThe Fat-Bodied Spiderなどは夏から秋に常用する陸生昆虫にイミテーションとしても大きな示唆を与えている。「ア・ベーシック・アソートメント・オブ・トラウトフライズ」の章では、マス釣りに使う基本のドライフライとして、アダムズ、ロイヤルウルフ、ミッジ、スパイダー、グレイウルフが欠かせないとしている。1980年刊。
The Soft-Hackled Fly
Sylvester Nemes著
使い勝手がよく速く巻けるフライといえばソフトハックル群。浮かべてもなじませても沈めても引いても使える便利さは十勝でも天下無双。色とサイズさえ揃えれば多くの虫をカバーする。蛇足だけどシルベスター本人が初めてソフトハックルの毛バリを見たのが、ミシガンの超実践的釣りキチにして伝説的ロッドビルダーであるポール・ヤングの店ってところもいい。80年代くらいまではたしかウィンストン社にシルベスターの冠がついたロッドもあったような。「ライゼンリング・リフト」の発案者ジェームズ・ライゼンリングの『The Art of Tying the Wet Fly』よりモダンな1冊。シークエンスも収録。1975年刊。
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