LOG ENTRY: EARLY SPRING, 2013

春アメマスのニンフィング

結氷期をのぞいて厳冬期から楽しめる、北海道ならではの春遊び。目標は”ハチマル”越え。

 春、古い釣り仲間のMが十勝に来た。ムツオと3人、川に春アメマス釣りに行った。Mは20代後半はアメリカ各地の銘川へ幾度も釣り旅に行ったり、オセアニアのフラットで大もの相手に”しょっぱい釣り”をしたりしてきた男。今は神奈川でサラリーマンをやっている20年来の友人だ。

 冬枯れの河畔林越しに川をのぞくと春の日差しに川面がキラキラ輝いて見える。はやる気持ちをおさえて大急ぎでウエーダーをはき、流れに立った。波立つ瀬からだんだんとヒラキに近づくあたりや深さのある緩流帯をしばらく眺めていると、流下するエサを捕食しているのか、キラッキラッと50㎝ほどの大きさの魚がさかんにフラッシングした。こうなるともう釣れたも同じ。一同笑みで満面になる。

 ポイントまでの距離がさほどなく、おおむね緩やかな流れに定位するアメマスを釣るならストライクマーカーの釣りがいい。マーカーは視覚的にもアタリを味わえるから見ているだけで楽しい。そして、よりよく”アタリを出す”という意味で合理的だ。

 いつも遊んでいる僕らはガイド役に徹することにして、いっとう最初にMが釣る。アメマスのいる場所より数m上流にキャストが決まり、オモ

 

 

 

春アメマスのこの”引き”をご覧あれ。心なしかムツオの口元も緩んでいるような。
春アメマスのこの”引き”をご覧あれ。心なしかムツオの口元も緩んでいるような。

リに引かれてニンフが流れに沈み始める。次いでマーカーが水面になじむ頃こそが、この釣りのきわどいところ。ヒラキの上流側、カケアガリのあたりにマーカーがさしかかった頃、マーカーがスッと小刻みに動く。Mの腕が反射的に動いて綺麗ににフッキングした。掛かったアメマスはグングン! としばらく頭を振った後一気に瀬を下り始める。リールが盛大な水しぶきを散らしながら逆転する。

「ヒャッホー!」とMから嬌声が上がった。

 

 日中はたくさんのアメマスと遊んだ。なかでも1尾はものすごい”引き”だった。ダイレクトドライブのビリーペイトが唸りを上げて高速で逆転し、ラインはおろかバッキングまで引きずり出して一気に50ヤードほど走った。Mがラインを巻き取りながら川の中を走って追いかけるも、とうとう姿さえ見ることができぬままバレてしまった。

 あれは80㎝をゆうに越える海アメマスだったんじゃないかとか、いや、あのスピードはニジマスだったんじゃないのとか、合計で70ヤードくらいは走ったこの魚のすさまじいファイトは、その後も何度となく僕らの語り草になった。それくらい鮮烈な印象を残してくれた。

 夕暮れ時になるとクロカワゲラあるいはオナシカワゲラのような極小サイズのストーンフライの羽化・流下に誘われて、あたり一面でライズが始まった。結局、ハッチしているナチュラルがあまりに小さくてフライに持ち合わせがなく、1尾も釣れなかった。けれど、久しぶりのライズの釣りはすこぶる楽しく、全員をじゅうぶんに夢中にさせるだけの面白さだった。

 

 ローカルの釣り人のなかには、アメマス釣りはつまらないなんてちょっぴり意地悪なことを言うアングラーもいるけれど、僕らはそうは思わない。北海道のアメマスくらい日本のフライアングラーに親しげな魚はいないんじゃないだろうか。ニジマスはワイルドだけど、なんてったってアメマスときたらすべてネイティブなのだから。

 アメマスを思う時、佳日に足を運んだイエローストーン国立公園内の、ファイアホール・リバーのカットスロート釣りを思う。ラストチャンスのニジマスともビッグホーンのブラウンとも違う、エルクやバッファローが遊ぶイエローストーンでしか味わうことのできないあの釣りを。カットスロートはかの地のネイティブだ。アメマス釣りをしていると、そんな思い出を重ね合わせるようにして楽しんでいる自分に、ふと気がつく時がある。

 

春のアメマス。秋のそれより痩せてはいるが見た目いじょうに元気いっぱい。ロッドはスコット社の6番、9フィート6インチ。ニンフィングで遊ぶならシングルでもレングスは長いほうが便利だ。
春のアメマス。秋のそれより痩せてはいるが見た目いじょうに元気いっぱい。ロッドはスコット社の6番、9フィート6インチ。ニンフィングで遊ぶならシングルでもレングスは長いほうが便利だ。
体力の回復を待ってていねいにリリース。北海道が世界に誇るネイティブ、限りある資源をたいせつにしたい。
体力の回復を待ってていねいにリリース。北海道が世界に誇るネイティブ、限りある資源をたいせつにしたい。
フラットなヒラキでフッキング。お楽しみの始まり。
フラットなヒラキでフッキング。お楽しみの始まり。
こちらは別のフィールドのクロカワゲラ。20番前後のパターンがあるといい。これら小型のストーンフライは陸上羽化のみならず水面羽化もする。同時期に羽化するユスリカも羽化にも留意が必要。
こちらは別のフィールドのクロカワゲラ。20番前後のパターンがあるといい。これら小型のストーンフライは陸上羽化のみならず水面羽化もする。同時期に羽化するユスリカも羽化にも留意が必要。
こちらのロッドは8番の10フィート。番手が上がった分だけファイトの時間も短くできて魚へのダメージも最低限に。少しのレングスでラインやリグの操作性はてきめんに向上する。もちろん、往年のリー・ウルフを気取ってあえてライトライン、ショートロッドで愉しむというのも"大人の味"でオツなのですが。
こちらのロッドは8番の10フィート。番手が上がった分だけファイトの時間も短くできて魚へのダメージも最低限に。少しのレングスでラインやリグの操作性はてきめんに向上する。もちろん、往年のリー・ウルフを気取ってあえてライトライン、ショートロッドで愉しむというのも"大人の味"でオツなのですが。

 

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